緑の芝生やダートコースを馬がすごい速さで駆け抜けていく競馬は、そのレースを見ているだけでも迫力に圧倒されるものです。特に、生で見ると馬の地響きのような足音には感動すら覚えます。そんな競馬ですが、一体どれほどの速度が出ているのか気になったことはありませんか?
競馬のレースを走る馬、いわゆるサラブレッドと呼ばれる馬は競争用に品種改良された馬です。つまり、整備されたレースコースをより速く走るためだけに生み出された馬というわけですね。今回は、そんな馬たちの最高速度は一体どのくらいなのか、あの名馬の速度は時速何キロくらいだったのかなど、競馬と速度にまつわることをご紹介します。
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サラブレッドの最高速度は?
冒頭でもすこし説明したとおり、サラブレッドはより速く走ることができるように、改良された馬です。しかし単純に最高速度が出る馬というわけではありません。「え?速ければ速いほどいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、サラブレッドが優秀な部分は、"騎手を乗せた状態"で"数分間"それなりの速さで走り続けられるというところなのです。
そんなサラブレッドは、騎手を乗せた状態で大体平均50〜70km/hで走ることができます。結構な幅がありますが、これはレースの距離によるからです。短距離のレースであれば時速70キロで走り切ることができますが、距離が長くなるとそれは難しくなるため、時速50キロ台になるというわけです。
ちなみに日本で記録されているサラブレッドのトップスピードは時速75キロです。この記録は、1000メートルのレースにおいて600〜800メートルを通過する時に記録されました。
アメリカでは全長402メートルのレースのさいに、最終速度で時速84キロを記録した馬がいます。しかし実はこれほどの短距離になると、サラブレッドよりもアメリカンクォーターホースという品種の馬のほうが速い記録を持っています。
アメリカンクォーターホースとは
アメリカンクォーターホース、通称クォーターホースとは、主にロデオなどに代表されるウェスタン競技で活躍する馬です。その他に、クォーターマイル競争(約402メートルの競争)を走ることもあります。
クォーターホースの瞬間最高時速は、2005年に記録された92.6キロとなっています!とんでもない速さですよね!!
クォーターホースは日本の競馬のレースでは使用されていません。しかし地方競馬場の一部では競走馬を誘導する役割をもつ「誘導馬」として活躍しています。ぜひ注目してみたいですね!
あの名馬ディープインパクトの時速は?
2019年7月に骨折により安楽死したディープインパクトは、大きくニュースに取り上げられました。ディープインパクトは競馬ファンはもとより、競馬を知らない人でも「名前は聞いたことがある!」というくらい有名な馬でしたよね。
ディープインパクトは強く優秀な馬だったからこそ、これほどの知名度を誇っているわけですが、そんなディープインパクトの最高速度は一体どのくらいだったのかちょっと気になりませんか?
ディープインパクトの最高時速は約65キロほどだったと考えられています。競馬はタイムを競う競技ではないので、正式に記録されているわけではありません。ですが、ディープインパクトが最も速く走ったレースから計算すると、65キロ前後になります。
時速だけで見ると、遅いわけではありませんが歴代最高というわけでもありません。しかしレースで圧倒的な強さを見せていたのは事実です。競馬というのは速い馬=勝てるというわけではないのです!レースでの駆け引きがあるところが競馬の魅力であり、予想を楽しくさせているとも言えるでしょう。
馬は全力で走ると死んでしまうの?
さて、馬は品種によってトップスピードの違いはあれど、動物の中でもかなり速い部類です。だからこそレースに使用されているのですが、それ以外に馬がレースに使用されてる理由として、騎手の言うことをきいてくれるという部分が大きなポイントになります。
多くの動物の中でも馬は賢く、人間の支持をしっかり理解します。そのため調教をしやすい動物です。レースの中で「序盤はゆっくりで、最後に追い込むぞ」という人間の意思をしっかり受け取り、騎手のプラン通りに走らせることができるわけですね。実に真面目で健気な生き物です。
しかしこの真面目さは時に諸刃の剣になります。なぜかと言えば、その馬が乗り手を信頼しているとその命令に従い続けてしまうからです。よく「馬は死ぬまで走る」などと言われるのも、この従順さが原因になります。
たとえばあなたが「全力で走って!」と指示されて、フルパワーで走るとしましょう。しかしどんなに足が速い人間でも、そう長い間トップスピードで走り続けることはできません。必ず息が切れて苦しくなりますし、手足の動きも追いつかなくなるでしょう。その時に脇から「止まっちゃダメ!走り続けて!」と指示されても、「無理!」とストップすると思います。また、とても頑張り屋さんで、どうにか走り続けようとしても、最終的に本能が「これ以上は危険」と判断すれば動きを止めるでしょう。
しかし馬は「走れ」と指示されると、苦しくても走り続けてしまう生き物のようで、心肺機能に支障がでても頑張ってしまい、その状態を維持すると最終的には死んでしまうというわけなのです。つまり「馬は全力で走ると死ぬ」というよりは、「馬は死ぬまで全力で走ろうとする」といった感じですね。
馬の限界とエンデュランス馬術
馬を使った競技というのは古今東西さまざまありますが、馬を可能な限り長く走らせる競技としてはエンデュランス馬術というものがあります。
エンデュランス馬術は、数十キロから、時に100キロを超える距離を馬で走り、そのタイムを競う競技です。しかし先ほど紹介したとおり馬は際限なく頑張ってしまう生き物のため、この競技では一定の距離を走ると獣医師により馬の健康がチェックされるシステムになっています。そして「これ以上は無理」と判断されると、そこでレースは終了になってしまいます。つまり、騎手は無理してしまう馬の性格を把握し、無理のない範囲で走行させる技術が必要になってきます。
この競技のあり方を見ても、馬の死ぬまで走ってしまう性質が見て取れますよね。
まとめ:馬は長い距離を速く走れる真面目な動物!
ここまで競馬ではどのくらいの速度が出ているのかを皮切りに、馬と速さについて紹介してきました。最後にまとめておきましょう。
- 競馬の時速は50〜70キロ
- サラブレッドのトップスピードは時速85キロ
- 馬は信頼する相手に命令されると際限なく走ろうとする
サラブレッドは速さを求めて改良された品種ではありますが、競馬は速さだけでは語れません。速い馬=強い馬ではないというところが競馬の面白い部分です。また、馬が人間の指示を理解してくれる動物だからこそ、競馬が成り立っているとも言えますね。
馬という素晴らしい動物に感謝しつつ、競馬を楽しみたいものです。