ポイント
この記事は病院に10年以上勤務経験がある方が執筆しています。
思いもよらない部位に見つかる、しこり。
鼠径部(そけいぶ。足の付け根のことをいいます。)にできていたら、誰かに見てもらうわけにもいかず、悩みますよね。
しこり以外に現れる症状を合わせてみると、何が原因なのか見えてくるかもしれません。可能性のある病気と、何科にかかればいいのか考えてみましょう。
このページの目次一覧
考えられる症状・原因・受診すべき科
鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの原因・症状
よく「脱腸」といわれる、腸の一部が皮膚の下に飛び出してしまった状態のことです。
初期には痛みはなく、やわらかいしこりが鼠径部に出現し、押さえると戻ります。
小さい子供の場合は、先天性のものがほとんどです。
大人では、40代以降の男性に多くみられます。
重たいものをもつような職業に就いている人や、ぜんそくの症状がひどい人など、やむを得ず下腹部に力が入ってしまう人は、鼠径ヘルニアになりやすい傾向があります。
鼠径ヘルニアの疑いがある時は何科を受診すべきか
消化器科、外科です。かかりつけに相談した後、手術のできる病院に紹介してもらってもいいですね。
高齢者の場合、進行しなければそのまま様子をみることも多いですが、飛び出して戻らなくなったり、痛みが出た場合は、急いで受診してください。
「嵌頓」といって、飛び出した腸が首を絞められたような状態になり、腸閉塞を起こしたり、腸が壊死(えし)してしまいます。
早めの手術が必要です。
初期の手術であれば、日帰り入院のこともありますし、多くは2~3日の入院で済みます。
手術も、腹腔鏡など傷が目立たない方法でできることもあるので早めに相談したいですね。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫の原因・症状
いわゆる血液のがん。鼠径部以外にも、全身どこにでもできる可能性があります。
原因は不明ですが、ウイルスや細菌感染が関係しているという説もあります。
鼠径部などのリンパ節のしこりのほかに、発熱、体重減少、ひどい寝汗などがみられます。かゆみや、発疹が出ることもあります。
臓器にまでリンパ腫が広がってしまうと、広がった部位によってさまざまな症状が出現します。
悪性リンパ腫の疑いがある時は何科を受診すべきか
悪性リンパ腫かどうかの判断は、精密な検査が必要なので、何科にかかるべきか、迷う
ところです。
もし「これは間違いなく悪性リンパ腫だ」と思ったら、血液内科がいいでしょう。
どうかな、もしかしたら…という感じであれば、かかりつけや内科で一度相談してみる
ことをおすすめします。必要なら紹介してもらえます。
悪性リンパ腫の治療は、化学療法(抗がん剤)や放射線治療がメインになりますが、臓
器に転移した場合には、外科的手術が必要になることもあります。
膠原病(こうげんびょう)
膠原病の原因・症状
膠原病と一口にいってもいろいろな病気があります。
皮膚や関節、筋肉など結合組織に炎症が起きる病気で、組織の炎症がもとでリンパ節が腫れる状態です。
一般的に知られているものに関節リウマチがあります。
そのほか、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデスなど、多くの膠原病がありますが、大半が女性と言われています。
リウマチ、と聞くとお年寄りの病気のように思えますが、もっとも多く発症する年齢は30~50代です。
ですから、若い女性が鼠径部のしこりに気づいたら膠原病を疑ってもおかしくありません。
膠原病の症状として、しこりのほかに、発熱、関節痛、指の関節の腫れ、手指のこわばり、目や口の乾燥感、筋肉痛や倦怠感などです。
産後の女性は比較的かかりやすい病気なので、気になる症状があれば早めに受診をしましょう。
膠原病の疑いがある時何科を受診すべきか
膠原病内科、リウマチ科がいいでしょう。
昔はリウマチになってしまったら手足が変形するというイメージでしたが、現在は飲み薬や注射などの特効薬もあり、早期に治療を始めればほとんどの人が良くなるようになりました。
関節の痛みがあると、整形外科に行くことが多いと思いますが、整形外科の先生でも膠原病を見極めるのは難しいこともあります。
上記のような症状があれば、専門の先生に相談しましょう。
まとめ
鼠径部のしこり。簡単にまとめると…
- 鼠径ヘルニア→消化器科・外科
- 悪性リンパ腫→血液内科
- 膠原病→膠原病内科・リウマチ科
鼠径ヘルニアになったことがあるという人はよく聞きますね。膠原病、特に関節リウマチの患者数は70万人とも言われており、案外多いのです。
早期発見早期治療で、痛みも苦痛も少なく済むよう、早めに受診しましょう。
ライター:あいろまん
10年以上関東の中堅病院で看護の仕事に従事する。
現在はデイサービスで看護しつつ、介護の仕事にも首を突っ込む毎日。
趣味は韓国ドラマ。ハングル検定5級。ただいま4級目指して勉強中。